ことをさす。したがって,調整力は,動きを時間的・空間的に調整する能力であり,神経系の体力と考えることができ,技術と密接に関わっているといえる。また,調整力の優劣は身につけた動きの種類と質によって決定され,その構成要因としては,平衡性,巧ち性,敏捷性などがあげられる。

(5)柔軟性 

柔軟性は,俗に身体の柔らかさのことであるが,これは身体の関節の可動性を示す。この柔軟性は,調整力と同様にエネルギーを効果的に出したり使ったり,あるいは合理的な技術を習得する際にもきわめて重要である。

ハンドボールでは,トップスピードの中での急激な方向変換,防御時に予測できない攻撃側に対する動きなどで,特に脚部への負荷は非常に大きい。また,身体接触によって自分の体重以上の負荷がかかることも多いため,筋力トレーニングと平行しての柔軟性トレーニングが必要となる。優れた筋力と高度な柔軟性とが合わされば,新しい運動形態も容易に習得できる。もし,柔軟性が伴なわなければ,どれほど筋力が優れていてもなかなか思ったように発揮できない場合もある。近年のハンドボールは,ますますスピーディーとなり,より激しい身体接触がみられるようになり,あわせて技術の高度化,勝負優先という考え方がゲーム中心となり,十分なトレーニングを積まないことによって,未熟な体力で高度な技術という無理をするため,特に膝や足首の障害が多くなってい るように思われる。

 

また,その日の練習でのウォーミングアップやクーリングダウン,あるいは入浴後の柔軟性のトレーニングを十分に行うことは,筋・関節の疲労回復に効果的であるため欠くことのできないトレーニングである。


Column

ハンドボール競技は,30分間ハーフで10分間の休息をとる計60分の激しいスポーツである。競技中の運動の種類としては,走る,跳ぶ,投げるという運動技術が,ダッシュ,ターン,ジャンプといったスピーディーな動作と,ジョギング走のように比較的テンポの遅い運動とが交錯しながら継続する競技といえる。

◆ハンドボール競技に必要な体力特性

ハンドボール選手に必要な体力特性としては,無酸素的能力と有酸素的能力の両者が必要といえる。

ナショナル男子選手(1989年度)について,無酸素および有酸素パワーのバランス分析を図でみると,Aは両者が優れており,Dは劣るグループである。また,Bは無酸素パワーが有酸素パワーより優れ,Cは有酸素パワーが無酸素パワーより優れていることをそれぞれ示している。競技中の推定運動強度(心拍数から推定)は,80%Vo2MaXと激しい運動強度であることや,Delamerche,p,et alは競技中に5分間隔で測定した血中乳酸濃度が4〜9mmol/1の範囲で変動することを明らかにしたことからも,ハンドボールの運動機能は,マラソンのように定常状態を伴う有酸素運動のみの運動形態というよりも,急激な強度変化を要求される無酸素運動を繰り返す運動であることが推測されよう。

このことから,高度な競技力をもつハンドボール選手は,高度水準の無酸素パワーが必要となってこよう。

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