2.体力をどのように考えるのか

ハンドボールに限らず,どのスポーツにおいても優れた成績をおさめるには,全面的な体力づくりと体力の諸要素(筋力,パワー,持久力,調整力,柔軟性)を,その種目の特性に応じて適正かつ重点的に強化することが重要である。 

141-zスポーツで必要な体力を表1に示したが,いかなる種目のスポーツマンにとっても,これらの体力要素を全面的にトレーニングすることがまず重要であり,専門種目での競技力を向上させるための基礎となる。


ハンドボールでは,体力のすべての要素が動員されるので,全面的な体力トレーニングが必要であるが,特に攻防の切り替えの際のダッシュや方向変換,フェイント,ジャンプシュートなどの瞬発的な動作や,ゴール前の密集地での相手とのコンタクトを考えると,筋力や無気的パワーがゲームの勝敗に大きなウエイトを占め,しかも前・後半あわせて60分間動きまわるための持久力も重要であることがわかる。 

したがって,体力を考える場合,ハンドボールの1つ1つの技術にどのような体力要因が関わっているかということと同時に,ゲーム全体として必要な体力についても考えてトレーニングすることが重要である。

3.技術・戦術と体力の関係

体力そのものを,バランスよくあるレベルまで強化しておくことは重要な基礎的条件であるが,ハンドボールの競技力からみれば,それは前提条件にすぎないのである。ハンドボールのゲームの勝敗を決定づける競技力の柱は,技術や戦術であるといえる。したがって,技術・戦術トレーニングの中に体力の向上が含まれるように組み立てておくことが重要である。 

ハンドボールの技術や戦術は,相対的な場でそのできばえが決まるため,それぞれの技術を正確に行えるだけでなく,むしろ相手より「力強さ」や「スピード」や「ねばり強さ」に勝ることが必要とされる。したがって,ハンドボールの技術は,「力強さ」や「スピード」や「ねばり強さ」などの体力的要素を切り離して考えることはできないのである。見方をかえれば,ハンドボールの体力とは,技術・戦術を通して発拝されるべきものと考えるべきであろう。 

指導者は,ハンドボールの技術そのものを段階的に高めていくことと並行して,その技術に必要な体力的要素を,適正にしかも重点的に養うように負荷をかけなければならない。したがって,技術練習をダラダラと反復させるのではなく,できれば技術練習の中に体力トレーニングの原理を導入し,技術練習の中であわせて体力のトレーニングを行えるような,複合的なトレーニングを準備しておくことも必要となる。 

トレーニング実施にあたって,以下の点に留意しておきたい。

①筋力,パワー,持久力などのエネルギー系の体力の一般的なトレーニングは,ハンドボール・プレーヤーのための体力トレーニングの重要な前提条件である。

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