48p11962年にはIHFのメンバーになり,CCMの委員長も務めた。

また,ブカレスト体育大学の学長でもあり,世界でも有数の理論家として,ヨーロッパをはじめ世界各国でハンドボールの指導を行っている。1960年の初来日以来,日本との交流も深い。今回の4日間にわたる講習では,ハンドボールの基礎技術からチーム戦術,トレーニングに至るまでを技術体系に基づいて,きめ細かな指導が展開された。彼の教えの中で,特に印象に残ったのは次の2点である。

○他人のコピーをするな

「ルーマニアのハンドボールを学んで,自分の国のプレーヤーに合った指導を行う」 

このことを繰り返し強調した。コーチはプレーヤーの指導にあたる時,今回学んだことをそのまま指導しても十分を効果は上がらないだろう。身体的条件や体力,国民性などを考慮して,トレーニングプログラムを工夫することが大切である。

○コーチの任務 

コーチは資質の高いプレーヤーを選抜し,トレーニングは実戦に近い形で,緊張感を持続させながら行うことが重要である。 

トレーニングの内容や負荷のかけ方などにも,細心の配慮がなされなければならない。 

優れた指導者と資質の高いプレーヤーが,科学的データに裏づけられた理論に基づいてトレーニングを行った時,世界最強のチームが誕生することであろう。

⒉ Jaroslav Mraz 

ハンドボールの競技力を規定する要因は多様であり,それらは複合的な関連のなかで発揮されるところに特徴がある。 

48p2精神的能力,身体的能力,技術・戦術的能力がトレーニングの対象となっていくが,チームゲームであるハンドボールでは,特に戦術的行為のトレーニングが重要である。しかし,戦術的行為を遂行するには,戦術的行為の仕方(個人,グループ,チーム)の習得とともに,戦術的基礎能力(知覚力,反応力,空間感覚,体形・ポジション感覚,適応力など)の習得も合わせてトレーニングする必要がある。この戦術的基礎能力は,ゲームを通して獲得されるものであり,そのため戦術的行為のトレーニングは,実際のゲーム場面に即して行うことが大切となる。 

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