2 発育・発達と指導

1) 指導対象者の特性の理解

 スポーツ指導者は,指導対象者の心身に関しての特性を知り,トレーニングに必要な正しい知識と理解が求められ,一貫した指導方針のもとでスポーツ活動,トレーニングを行わせる必要がある。また,自分の指導対象の特性だけではなく,その前後の段階の特性を知ることは,選手たちの理解を−層深めることになる。

2) 小学校低学年期

 この時期は,幼児期と児童期のどちらの特徴をも合わせもっている。小学校での社会生活のトレーニングをつんでいるとはいえ,動き回り,はしゃぎ回って落ち着かないという特徴は依然として現れる。集中力も長時間持続しない。練習の場でも気が散りやすく,思いつくままに動き回り,1つの活動が長く続かないという特徴を示すことを指導者は考慮しなければならない。この段階では個人が楽しむ遊びを中心に,多くの基本的な運動を習得させるような指導が求められる。専門的な技術を教え込もうとしたり,細かな動きにこだわるような指導は,子どもたちの意欲を減少させるであろう 。
 筋肉の特性からこの時期の特徴をみれば,ボールを投げようとするフォームに違いをみることができる。バックスイング時の腕の振り上げ,ボールを後ろに構える動作は,成人であればボールを投げるための前屈する力を引き出すことができるが,この時期の子どもには効果的ではない。筋肉の性質がそこまで発達していないからである。この時期の指導に,おとなのフォームを適用させるのは無理である。ドッジボールの初期の投の技術がまわし投げ,いわゆる横投げであり,その後,技術構造が複維なオーバーハンドスローの腕振り投げへと発展するのと同じである。小学校低学年,中学年でドッジボールが盛んに行われ,高学年になって野球に人気がでるのは,運動構造や技術の難易度からみて当然のことといえよう。しかし,このことはこの時期に腕振り投げ型のボール投げの指導を否定するものではない。握りやすいボールとか,ボールにひものついたものとか,つかみやすいものを用いて指導すると,より遠くに飛び,興味を増す。
 平成4年度から全面的に実施された新小学校学習指導要領では,第1・第2学年のゲーム,「ボール遊び」の内容として,シュートゲームを取り入れている。走,投,跳の基本的な運動が含まれる,いわゆるハンドボール型の種目といえる。ハンドボールは,ボールが握れることが技術の向上につながっているので,ボールの選択は工夫が求められる。また、ゴール,コートの広さも検討する必要がある。塩化ビニールのパイプ管を組み合わせれば,ゴールはどのような大きさでも,誰にでも安価に作成することができる。指導者の手作りのゴールは子どもたちの自慢にもなり,−層のがんばりにつながるであろう。

3) 小学校中学年期

 小学校中学年は,自分の技術に関心が高まり,運動をスムーズに行うことができる。また,競争的な運動に対する興味を強く感じるようになったり,1つの運動を持続的に練習できるようになる。数人でグループを作り,仲間意識が強くなり,他からの干渉を好まなくなる。まだ自己中心的とも

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