とともに,練習に対する積極さを育てるために,また,コミュニケーションの一部としても,メニューに対する対話を試みるようにするとよい。メニューの中には復習のメニューもあれば,これから新しい技術を習得するためのメニューもある。
 その区別がつくようにしなければならない。

④ 説明

 指導者が考えていることを言葉によって理解させることが必要である。このドリルが何のために必要かを理解してするか否かでは,効果に大きな違いが出てくるはずである。要領よく具体的なイメージが描けるように説明する。

⑤ 示範

 指導者は,教えようとする技術の示範ができなければならない。言葉による説明とともに,示範は技術の指導では欠くことのできない要素である。何よりも具体的で,生徒には最もイメージしやすいのが示範である。示範の方法も示したい事柄によって異なるが,運動のある瞬間を止めておこなったり,ゆっくりと動作することによって,示そうとするところがよく分かるように見せたりする。示範において気をつけなくてはいけないことは,指導者の真似させたくない面まで生徒に真似させることがあることや,示範を現実のスピードやリズムからかけ離れた方法で行うことによって,形は真似ることができても,大事なスピードの要素のイメージを植えつけられないといったことがある。示範によって間違ったイメージを植えつけるなら,示範はしないほうがよい。
 技術は日進月歩である。指導者の選手時代の技術だけでは時代遅れということもあるので,新しい技術の情報収集を怠ってはいけない。できるだけ自分でもやってみて,指導法を開発していかなければならない。

⑥ ドリルの実際

 新しい技術の習得に関しては,段階的に指導するのが望ましい。一度に多くのことを要求しないで,平易な状況から徐々に試合の状況に適するように進めていく。
 第1段階として,ディフェンスがいない状態で,しかもゆっくりと形の練習をする。慣れてくれば徐々にスピードをつけ,実際に近い動作で行う。
 第2段階として,ディフェンスのいる状態を作り,第1段階で得た動作を始め,徐々にディフェンスも対応して動作を適用させていく。
 第3段階として,グループ練習やゲームの中で,第2段階で得たことを適用させる。1つの形から他の形へのバリエーションを作り出していけるようにする。

⑦ 練習時間

 強いチームほど質の高い,また,量の多い練習をしているのが普通である。質の高い練習は上手な選手を作り,量の多い練習は強い選手を作る。勝つチームを作るためには上手で強い選手を作る以外にない。しかし,休みのない練習や長時間の練習によって生まれる弊害もあることをよく考えなくてはならない。
 学齢期にあって勉強とスポーツの両立を図れないような練習では,スポーツの世界から能力のある人材を手放さなくてはならないという現状も事実である。ハンドボールは非常に激しいスポーツである。練習時間は2時間を1つの基準として考え,1週間のうち1日か2日は完全な休養が必要であり,体力や年齢に応じて調整すべきである。

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