1 指導者の心得
1)指導者たるもの
指導者は,その集団を間違いなく目的とする方向へ導いていかなくてはならない。そのためには,
まず,集団から信頼される人柄の持ち主であることが第1の条件となるが,それに加えて指導能力を備えていなければならない。ハンドボールを通してどのような人間を育てるのか,また,どのような試合をさせるのか,そのためにはどのような技術・戦術を身につけさせるのかなど,具体的なイメージを持ち,現状を分析して,その隔たりを埋める努力が必要である。生まれも育ちも違う人
を導いていくのであるから,それ相当の能力がなければできることではない。その点において指導者というのは誰でもがなれるものではなく,指導者としての素質とそれを磨く過程が必要である。
指導は努力と忍耐の連続であるが,それに見合った喜びが必ずあることを教えてくれるものであ
る。
① 指導者の3つの仕事
指導者は,指導に際して3つの課題と常に向かい合っていると言ってよい。
・教育的側面……teacherとしての役割であり,人格の優れた人材を育成する。
・技術的側面……Coachとしての役割であり、技術の上手な人材を養成する。
・勝負的側面‥…勝負師としての役割であり,ゲームに強い人材を育成する。
この3つの世界は,お互いに別個のものではなくお互いを補うものであったり,ある時は表裏一
体だったりするものであり,不可分な性質を有している。指導者にも個性があり,どの世界を表看
板にしているかはその人による。スポーツは勝たなければならないという勝負の世界から指導に臨
む人,そうではなく人格の育成という教育の世界から臨む人,また,技術や戦術の指導こそスポー
ツの本筋であると文化的な面から臨む人など,指
導者を大別すればこの3つのタイプに分けられ
る。しかし,指導していくにしたがって,結局のところそれぞれがバランスよく支えあい,そして
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