た。8の字戦法はその典型である。ディフェンス は速攻を考えてのディフェンスとなり,5−1や 4−2ディフェンスはローリングオフェンスに対 抗するうえでも,また,速攻に対する出やすさか らも多くのチームで採用された。

3.スカイプレーやプロンジョンシュートの登場
[昭和30年代後半]

 スカイプレーは,日本で開発されたプレーであると言われる。また,欧州では「ケンパトリック」 の名のごとく,ドイツのナショナルチームの監督 であるケンパ氏が創作したものであるとも言われる。ゴールエリアの空間を使用してのコンビネー ションは,ハンドボールのコンビネーションの 中ではひときわ華やかで技術性に富み,プレーヤ ーは一度はやってみたく,観衆の楽しみの1つで もあったが,意外性に富むもののその成功率は低 く,競った試合で見ることはまれなことであった。
 5−1ディフェンスにあって,中央が厚いディ フェンスではサイドを有効に使用しようとするの は誰もが考える策であった。サイドの角度のない ところから身体を完全に横に寝かせ,ゴールエリ ア中央に向かってダイビングして角度を稼いでシ ュートするプロンジョンシュートは,アクロバッ トなシューティングとして登場し始めた。

4.セットオフェンス(ダブルポスト攻撃)の登場
[昭和30年代後半]

 ローリングオフェンスに変わってセットオフェ ンスが登場した。この戦術の特徴は,ローリング オフェンスがポジションを移動しながら攻撃するのに対して,ポジションを決めてパスを振り,ディフェンスを揺さぶって突破していこうとするも のである。走り回るハンドボールに対して,2, 3歩のステップによってシュートを狙い,パスした後はステップバックして元の位置へ戻るという ポジションプレー中心の攻撃であった。
 2人のポストプレーヤーをおき,シュートを狙 ってステップバックを繰り返す攻撃を始めると, ディフェンスはオフェンスのポジションに釘づけとなり,4−2のディフェンス体形をとった。デ ィフェンスはローリングオフェンスに慣れていた が,ステップバック型のセットオフェンスにはその最善の防御法を見いだせない時期が長く続いた。防御がマンツーマン的なシフトをとるために, 攻撃は意図的なポストプレーやカットインプレー がよく決まった。いわゆる「縦ブロック」が流行 しだしたのも,このオフェンスが登場してからで ある。
 この攻撃は,欧州に遠征した学生チームによって持ち込まれたと言われており,この攻撃をいち 早く取り入れた立教大学が学生のトップとなり, それを見ならうチームが全国的に増えてきた。速 い攻撃でのローリングオフェンスの中でシュートチャンスを作るのは,基本がしっかりしていない と偶然的にしかチャンスを見いだしにくいが,こ の攻撃は,自分のポジションを中心にしてプレー するので初心者にも全体が見え,しかも攻撃技術 はオールラウンドではなくてもよいので,てっと り早いゲーム導入法として取り入れる指導者が多かった。昭和40年代はこの戦術の全盛であった。 この戦術に対しては,一方では活動量の少なさか ら,本来の日本が推し進めてきたハンドボールを 損なうものではないかという議論もあった。

5.片手で握ってのプレーの出現  [昭和40年代中頃]

 7人制から11人制に移行し,また,セットオフ

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