誰もができ,教材として柔軟性がある。
 なお,実施に際しては安全性の確保が十分なさ れなければならないが,シュート時のゴールキー パーの保護や,キャッチの際のケガ防止のために ボールを工夫する必要があり,ゴールの大きさや シュートラインの距離への配慮も必要となるであ ろう。また,接触を制限するルールや反則をさせ ない指導も時には必要であろう。

3 ハンドボールの技術・戦術的発展

①ハンドボールの技術・戦術的発展の概要

1) 11人制時代・ローリンクオフェンスの全盛[昭和37年まで]

 攻撃の基本はシュートを狙ったプレーを継続す ることにあるが,11人制においては,その基本を 忠実に実行しない限り得点を取るのは至難の技で あった。ゴールからゴールエリアまでの距離は13 mと遠く,走り込まなくてはシュートに威力はな く,走り込んでプレーするということは必然的な 条件であった。したがって,走り込むプレーヤー が連続してローリングオフェンスを行うことは, ハンドボールの攻撃戦術の基本であった。攻撃は 広いエリアを守るために,個人のフットワークを 主体にした6−0防御の体形をとるのが一般的で あった。
 技術的には,ボールは大きくまた変形するため に片手でプレーすることは論外のことであり,すべてのプレーヤーは両手でボールを保持するのを基本としていた。それでも,昭和35年に世界2位のルーマニアナショナルチームが来日したとき は,現在で言うラテラルパスが随所に使用されていた。シュートの動作に多彩なものは持ち込めな かったが,バウンドやループなどの技術が使われ た。さらに,20mものロングシュートをするため, 技術よりはいわゆる肩の強さが最優先であった。 ゴールは現在のサッカーゴールと同じ大きさなので,ゴールキーパーはその場からのジャンプだけではなく,ステップして,空中を泳ぐように横跳びすることが要求され,そのキーピングは華麗な ものであった。

2.7人制独自の技術と戦術の発展  [昭和38年から]

 7人制になってなにが変わったかといえば,技 術・戦術の多彩さとスピードである。これは,コ ートが約6分の1となって近距離での攻防が行われることや,11人制のように攻防が分かれておらずセットと速攻が連続して行われるため,多彩さ とスピードがでるのは必然的な結果といえる。シ ュートの距離は近いがゴールは狭く,ゴールキー ピングは飛んで捕るというより瞬時の動きで身体 でボールを防ぐ形になり,シュートの位置やタイ ミングを変化することが必要になった。位置を変 えるために身体を倒したり,あるいは倒れ込んで シュートするなどの技術が出てきた。パスもシュ ートと同様に近い距離でなされるため,タイミン グや動作の多彩さがいっそう出てくるようになっ た。
 戦術的にはワンポストからのローリングオフェ ンスが用いられた。やはりボールを走って受け, ディフェンスとディフェンスの間をカットインし てシュートを狙い,だめならパスをしてつなぐというのはハンドボールの基本であり,結果として はローリングオフェンスにつながるものであっ

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