3、4歳の子どもは、割に大きいボールでは、オーバーハンドスローの前段階を表す前後開脚の姿勢からの両手投げで、近い距離から目標をねらうことができる㉑。この場合、他者の行動をまるごと一気に模倣できるのは、運動を感覚する身体を前提にしているからであり、いわば幼児は他者の動きの感じを運動メロディーとしてまるごと知覚し、しかもそれは対私的な運動意識ではなく、「他者とともにある意識」に基づいて共感するからこそ模倣できるのだという㉒。仲間とともに遊ばせること、そのなかで個々の動きかたに関与していく方法など、幼児や園児の指導の基本は、ここでいう感覚の世界に入り込むことにある。

5おわりに

若干、本来のテーマからずれてしまったが、日々の部活動のなかで確立された投げかたの指導法が、個々の運動問題の解決にある程度役立ってきたという例証を挙げることができた。それぞれの例証のより厳密な分析は今後の課題とするが、ボール運動を得意にさせるためには何か大切かということを幾分明らかにできた。すなわち指導者にとって、基礎的な練習法を提示できることは確かに重要であるが、その場合、個別の問題に柔軟に対応できることが基本的な課題になるということである。そのために指導者は、当該の学習者に必要な運動感覚能力の発生を促す能力を身につけ、それを常に磨いておく必要があろう。なお、ビデオ画像の使用に際しては、本人と親の許可を得ていることを付記しておく。

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