⑤同じ体勢から、左足を前に踏み出してから、右手でボールを投げ下ろす(精一杯捻ってから足を踏み出す。腰を前方に運びながらからだ全体を腰部から順次に捻り戻していく感じ。左足で勢いを制動しながら腕を振り下ろす感じ。ボールは右手の指と上体で押さえる感じ。「投げた」後は、自然に前に運ばれる右脚部が余勢を受けとめる。画像5)。

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実際には練習する者の意欲や関心、習熟度や 運動発達などを配慮して行う。また、情況的な 投げかたとの関連性を求めるという点で、この 練習法の発展性、さらにはこの方法とゲームの発展性との相互依存的な関係を考慮する必要があるが、本稿では触れない。次に、筆者が運動感覚世界における共振のなかで違和感を感じ取り、投げかたの運動修正を促した例証を挙げる。

■肘下がりの高校生

青森県の高校2年生、B選手の場合。大学生との合同練習は決して多くはないが、大学の練習になじんでいた。しかし、部活を始めて1年になるというのに、ゲームでロングパスがうまくできない。近距離のパスも、全体的に観て、肩を通して勢いをボールに伝えていく感覚がつかめないまま、癖のある投げかたが定着している(画像6、公式用2号球を使用)。

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そこで、大学生との対人パスの練習形式で、「トルネード投げ」を実施した。とりわけB選手には、練習①と②の問に、肘の位置感覚を意識させるために、上体を捻らないで右腕で投げ下ろす段階を導入した(画像7)。この日の練習で、若干変化が観られた(画像8)。

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もちろん、この時だけの練習を観て、「いったん身につけて習慣化した運動感覚図式を解除し、消し去ることができる能力⑳」を確認できたとはいえない。しかし本人は、自分で新しい運動感覚図式を安定化させていく手がかりをつかんだようである。

■右足前の幼稚園児

附属幼稚園年長組、C子の場合。学生の卒業研究の指導で何度か園を訪問していたので、子どもたちは、学生になじんでいた。ある時筆者は、保育活動のなかで、子どもたちとともにボール運動をする機会をもつことができた。我々はすぐに打ち解け、様々なボールハンドリングや簡易ゲームで、その日は2時間ほど遊んだ。子どもたちはゲームに夢中になっていたが、軽量球を用いたにもかかわらず、投げかたがぎこちない子どもが多いと感じた。そのなかで、右利きなのに、右足を前に出してボールを押し投げるC子を見出した(画像9、教材用1号球を使用)。

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そこで二度目の訪問の時、大きな直方体の積み本にボールを当てるゲームのなかに「トルネード投げ」を導入した。C子は能力が高かったので、練習④から入ったが、練習⑤での2回の示範と言葉かけで、偶然、右足前を直してしまった(画像10)。

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まだその動きかたは心もとないが、筆者が「投げようとする」場面で、上体を捻ってから、「苦しい」と言い、すかさず「ボン」と言って足を大袈裟に振り上げてみせたことをまねてしまった。


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