体育・スポーツ哲学研究第4・5号、131~146頁、1983年

素」の2拠点18)からとらえることは有効であろう。さらにハンドボールでは,個人の運動だけに限定せず,正確なデータがとれる可能な範囲内で情況をとらえる必要がある。それゆえ,対応動作(先取り動作)を明確にとらえるために,少なくても対応関係にある他者と同時に観察できる撮影の仕方を工夫し,そこにおける関係的要素を記述することが必要であろう。その際、技の形態的課題は,運動実施の目的に結びついていることを知っておく必要がある。すなわち,ボールをゴールに入れるという目的のために,身体の側に現われる課題が形態的課題であると考えられる。

4.(事例)一シュート運動の分析法

実験の目的は,ハンドボールに特有な運動を正しく認識するための自己観察と他者観察の有劾な方法を検討すべき資料を得ることである。事例としてジャンプシュート運動をとりあげ,条件設定した(資料③ー1)。そこに示したように,被験者には実際の具体的ゲーム情況を想定してもらった。又,3回の各課題実施直後,体験残像を基に,自己観察させ記述させた。その際,前述したように,運動投企を考慮する必要から,自己観察の意味を拡大解釈し,さばき方ばかりでなく,意図などもとらえるための質問紙を作製した(資料③ー2)。さらに,かけひきをみるために,キーパーにも同時に記述させた。又,Aには1年間自己観察の訓練をさせている。撮影にあたっては,具体的情況を考えて,キーパーとの対応関係が観れるように資料③ー1の

資料③ー1

◎実験(1982,8,7,山形大学体育館)

目的:自己観察と他者観察の有効な方法を検討すべき資料を得るために,ジャンプシュート-の運動分析を試みる。

方法

1.下図のようにセッティングした。

2.被験者は山形大学ハンドボール部員3名(O:経験年数6年S:経験年数4年A:経験年数1年)。

3.説明ーゲーム場面におけるキーパーとの1対1という情況の想定。次の課題で計3回実施する。
4.実施課題

1ボールをもらってジャンプシュートをうちなさい

2キーパーと自分を意識してボールをもらってジャンプシュートをうちなさい。

3ボールをもらってジャンプシュートをうちなさい。

5.自己観察ー3回のそのつどの実施直後,記述させた(右の質問紙を用意)。

6.他者観察ーシューター後方より100コマ/secで撮影した16mmフィルムをモーションアナライザーによって分析し,運動経過の運読図を原資料として示した(課題1のみ)。

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