この項目についてのコメント(駒澤大学教授) 村松 誠

1.はじめに

ハンドボールが国際的にもっとも注目を浴びるのは、オリンピックであり、世界選手権である。その一つであるオリンピックに出場している選手達の活動場所はどこにあるのかは大変興味深いことである。
 選手の活動拠点はクラブであるが、どのクラブに属するかの選択は、様々であると思われる。ハンドボールの競技水準や経済的な優遇面、普及度がその要因の主なものであると推察される。
本調査はリオ・オリンピックに出場している男女の選手の活動場所(国)を調べたものである。
 資料は、IHFホームページよりリオ・オリンピックに出場した各国のチーム名簿(Team Roster)をダウンロードして数値化して統計処理した。

2.男子リオ・オリンピック出場選手の活動拠点(国)(図1)

男子活動拠点国

図の説明

左下に出場国を成績順に示している。「国外へ」の表記は、自国から他国のクラブチームに所属して活動していることを表し、棒グラフは、所属している国名と人数を示している。「国外から」の表記はその国のクラブに所属する他国の選手である。右側の水色で示している範囲にある国はリオ・オリンピックに出場していない国で、リオ・オリンピック選手を受け入れているクラブの国を示している。略称は次の通りである。

1)国外に出て活動しているオリンピック選手

自国を出て国外のクラブに半数以上登録選手(14名中7人以上)がいる国は、多い順にデンマーク(13人)、クロアチア(12人)、スウェーデン(11人)、ブラジル(10人)、スロベニア(8人)であり、あとは半数以下である。国数では、順に3,6,4,4,4ヶ国で、クロアチアがもっとも多い。
 ほとんどのクラブが他国のクラブに所属している中、カタールは他国でのクラブに所属していない。カタールの事情は、特殊である。朝日新聞のGLOBEなどで報道されているように、ハンドボールの選手は、ほとんどが帰化選手である。出身国はフランス、スペイン、クロアチアなど11ヶ国に及び、カタールに帰化するまでには、ヨーロッパの各国で活動・活躍していたものである。他国で活動する選手がいないとはいえ、事情は違っている。

(2)他国で活動するリオ・オリンピック選手受け入れ国

図1から多い順に、いずれもハンドボールの強豪国であるが、ドイツ(26人)、フランス(16人)の2ヶ国が多く、オリンピック出場国以外ではスペイン(17名)である。この3ヶ国がリオ・オリンピックの出場選手が外国に出て主に活動している国であるが、この3ヶ国にオリンピック選手が多く活動している理由は、競技力の高さ、国内のリーグの充実、経済面などの要因が推察される。

3.女子リオ・オリンピック出場選手の活動拠点(国)

女子活動国

(1)リオ・オリンピック選手の国外に出ての活動

リオ・オリンピック選手で、チームの登録選手14名の半数以上が他国のクラブに活動拠点を置いているチームは、その人数が多い順に、オランダ(13名)ブラジル(12名)、スペイン(11名)、スウェーデン(11名)、フランス(8名)、ノルウェー(8名)の6ヶ国である。国外に拠点を置く選手がいない国は、優勝国のロシア、韓国及びアンゴラである。

(2)他国で活動するリオ・オリンピック選手の受け入れ国

リオ・オリンピック選手が外国人選手として活動している国は、オリンピック出場国では、フランス(14名)が格段に多い。出場国以外では、ハンガリー(16名)、デンマーク(15名)が多く、この3ヶ国が外国人リオ・オリンピックを多く抱えている国と言える。男子と同様の理由が推察される。

4.まとめ

本調査ではリオ・オリンピックに出場している選手の活動場所を知ることが目的であったが、オリンピックに出場している全選手168名中男子78名、女子77名が自国を離れ他国のクラブに所属して活動していることが明らかになった。割合にして男女とも46%である。約半数が自分の活動場所を求めて他国で活動していることに改めて国際的な交流が進んでいることがわかった。
 国によっては、受け入れが主であったり、出て行くのが主であったり、その両方とも行っている国などがあり、様々である。しかし、このような交流がその国のハンドボールの強化や普及に影響を与えていることは間違いないことである。ユーロに所属する国は、交流に大きな壁はないかもしれないが、ユーロに属しない国や地域的、その国の強化策など交流したくても出来ない国もあることが伺われる。

日本も海外に拠点を置いている選手は、リオ・オリンピック予選時で、男子で1名、女子で3名であった。リオ・オリンピックに出場した外国の選手の日本での活動はゼロであった。今後の日本の国際競技力を考える上で、本調査も1つの資料となるのではと考えます。

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