研究例1
女子分析担当チーフ 平岡秀雄
女子分析担当班は、東アジア大会を機にナショナルチームの分析システムを構築すべく、ナショナルチーム総括コーチ水上氏より依頼を受けて組織致しました。2000年6月にフランスで開催された女子世界学生選手権大会で構築しました、VTRとパソコンを利用したシステムを軸に分析を進めました。
分析の中心はパソコンによるランニングスコアの記録と戦術分析、及びDVDによる試合の記録と重要場面の編集・記録でした。大会開始直後は、各国の個人・戦術データを提示するとともに、DVDで編集した攻防場面を利用してミーティングが進められました。本大会ではパイオニア(株)の協力を得て、新システムによる画像処理を試験的に採用しています。
最終試合の韓国戦のミーティングでは、主だった選手個人の特徴(シュートコースなど)なども含めてミーティング時に提示することが出来ましたので、分析による大きな成果を得たものと考えます。また、本システムの継続利用を想定し、選手にもデータ入力の協力を得て、選手によるデータ収集の可能性をも示唆しました。
分析システムに関する詳細は、以下の通りです。
(1)方法
DVカメラで試合場面を撮影するとともに、パソコンを介した分析ソフトで画像キャプチャ個所を記録し、瞬時に編集できるようにしました。画像の記録に際し、ミーティングに必要な場面を選抜するため、可能な限りナショナルスタッフとの共同作業となるようにしました。ただ、試合準備の都合上ナショナルスタッフの参加を得られない場合は、分析スタッフがミーティングに必要と思われる場面を記録・編集し、後ほどナショナルスタッフが必要な場面を選別するようにしました。
編集した画像と、対戦相手及び日本チームの攻防場面を、速攻場面と遅攻場面・攻撃場面と防御場面などに分類し、その特徴をパワーポイントに記述してミーティングに備えました。
(2)結果
ミーティングで示した分析観点・結果の全資料は、資料1(CDの資料を含む)に示した通りです。その際に示した画像は、資料2(VHSテープ)を参照して下さい。
次に対戦するチームの試合を、攻撃場面と防御場面・速攻場面と遅攻場面・数的優位な場面と数的不利な場面などに分類し、プロジェクターを介して大画面で確認できるようにしました。その際、それぞれの場面での注意点をパワーポイントに記述し、同時に見せるようにしました.図2はミーティング時に選手に提示した画像の解説部分例(パワーポイント版)です。
(1)方法
東海大学が開発した試合記録ソフト及び戦術分析ソフト(図3)を利用し、試合の記(ランニングスコア・シュートコース・保持ミスの内訳など 図4・図5参照)をするとともに戦術の分析(図6)を行えます。
試合の記録分析結果は、当日の夜までに監督に届け、ミーティングの材料となるようにしました。また、シュートコースなどは画像処理し、ミーティングで活用できるようにしました。
図3 パソコンのデータ入力画面
図4 エクセルデータ画面例
図5 選手別コース別シュート成功割合例
図6 戦術分析データ例
(2)結果
パソコンによる試合の記録と戦術分析データは、資料1(CDの資料を含む)に示した通りです。試合前のミーティングでは、次に対戦する全選手のプレー内容と戦術分類結果を提示するとともに、主な選手のシュートコースを図5で示したように図示して解説を加えました。
従来からナショナルチームスタッフは、独自の視点で試合分析を行い、ミーティングや作戦会議に利用してきました。しかし、今回始めて分析スタッフを組織して、総合的な分析システムを構築すべく取り組みました。
今回の東アジア大会は日本国内で開催されましたので、充分な分析スタッフを用意することが出来ました。しかし、国外の大会では必ずしも今回ほどの分析スタッフを確保できるとは限りません。そこで、分析システムを構築するにあたって、ナショナルスタッフや当日の試合に出場しない選手をも動員して、データの収集が出来る方法を模索しました。
本大会でのパソコンによるデータ収集でも、ナショナル選手が入力できるように指導し、選手が数試合のデータ収集を行いました。試合の分析方法には多くの方法が考えられます。しかし、ナショナルスタッフが独自の分析視点で試合を記録し、そのデータ入力に選手が携わることのできる今回の方法は、現状では有効な手段と考えます。
(2)分析例
*戦術能力を評価する方法を確立し、戦術能力が向上したかを検証できるようにした.
ハンドボールの攻防場面における最終段階で画面を消し、その瞬間の選手の位置をコート図に記述させ、その後のシュートに至る展開先を予測させた.その際に記述されたコート図から、有資格者による評価基準に基づき主観的に評価したが、その際の選手の位置図が評価基準のどれに相当するかを;印象分析;を利用して採点した.