平岡秀雄

研究8:ハンドボ-ルのクイックシュ-トに関わる事例研究 第1報-

コ-チングの手順とその効果-

東海大学スポーツ医科学研究所医学雑誌,2012

高校生を被験者に以下のような手順でシュート動作を指導した結果、1時間程度の指導でシュート成功率は大幅に向上し、クイック動作を出来るようになり、シュート成功率も向上した.

指導ポイント:この指導手順は有効である.

この手順による指導は、毎年開催する中高生対象の講習会でも実施し、大いなる成果を挙げている. 

シュートの具体的な指導手順(効果的な指導の最新版)

指導の狙い:パスレシーブ前に次のプレーを考え、行動出来るようになる.

指導手順:

Ⅰ アップ:ランニング、スキップ、サッカードリブル、膝ストップほか 

Ⅱ 0-1歩ステップでキャッチからパス(4人1組 ジグザグパス 間隔は7m程度)

*弧を描いてバックステップする.

z1

①パスを受ける前に左又は右に弧を描いて位置を取り、パスレシーブ時に左足で踏み切り空中でパスを受ける.(右利)

②ボールを中心に身体を前に進ませ、右足のつぎに左足を着地させてパスの軸足とする。4人で見本を示す

③軸足(左足)着地と同時にフォワードスイングを開始し、フォロースルーを大きくして投球する.投球後右足が前に出るまで身体を移動させる(遠投力を向上させるため)こと
 図1 4人組パス         

Ⅲ 5人で速いパス(位置取り・カットイン・パス  DFにコーンまたは人を立てて行う)

z2

①パスレシーブ後、0-1歩ステップでゴールに向か いながら素早くショルダーパスをする。このとき、ボールを軸に身体を前に移動させてバックスイング動作を完了させると、キャッチの瞬間にフォワードスイングを始められ、素早いパスが出来る. 

②パスを5往復させ、その所要時間を競ってみる.5人の中に入り見本を示す

<チェック>パス後斜め後方にバックステップし、反対側のDFの間に加速 しながらカットインしフリースローライン手前でシュート準備が出来ているか?

Ⅳ 3人組対人パス シュートの為のスロー6人の中に入り見本を示す

パスレシーブするボールの位置より前方に0-1歩ステップしてフォワードスイング

6人組:補助がボールを片手で顔の前へ突き出すように保持する.
1,補助のボールを両手でもぎ取るようにし、身体を0-1ステップで前に移動させる。
2,ボールを上に移動させ、高い打点から対角の補助にパスする.
3,パス後は補助に回る。3名でローテーション
z3  

図3

GKはストレッチング

Ⅴ 0-1ステップからクイックシュート

 初めに見本を示し、以下の注意点を説明する。

ima3

①補助者にボールをパスし、補助者が片手でボールをつかみ顔の前に保持したのち、走り込む.

②空中でボールを両手で保持しながら0-1歩ステップし身体を前に移動させ、両足着地時にバックスイングを終了する.

③0‐1歩でシュートする際、胸身体をゴール面に向けるのではなく、 左肩からゴールを見るように身体を横に向ける.

 

④慣れれば、パスレシーブから0-1歩でシュートする.
 
<狙い> 準備動作(バックスイング)の時間を短縮し、0-1歩ステップをすることにより、キーパーの準備動作より早くシュート動作を完了.

Ⅵ ボールの軌跡を変化させる。  この指導が成功のカギ!

<狙い>

キーパーはボールリリースの前にシューコースを判断しないと、ボールに 対応できない事を説明し、実演する.

z5

1 キーパーから2mほど離れて、右上(流し)にハーフスピードで投げる.

キーパーにはフォームを見てボールを阻止するように指示する.

2 体重の移動、ボールの軌跡を脇の下に向けて投げ、  GKが簡単にシュートを阻止できることを確認する.(GKはフォームを見てシュートを阻止できることを見本で示す)

3次にキーパーが図5の姿勢の時、脇下にシュートすると伝え、バックスイングで腕を静止した状態から一瞬でシュートすると、キーパーの阻止反応が遅れる事を示す(ゴール). 

* 脇の下と顔の横、股下がGKの弱点であることを知らせておく

* フォワードスイング時機を知らせなければ、シューターは優位に立てることを証明する.

4 実践場面ではシュートフォームとボールの軌跡を変化させて、GKに嘘の情報を見せ、右上への投球の途中でスナップを使って脇下にシュートする. 上手くコースを変化できれば、簡単にシュートが決まる。 何人かに実施させる. 

5 スローの位置を7mラインに移しても同様で、左上のフォームで右脇へシュートする方法の実演が出来るようになると、生徒はシュート動作の違いを見極められるので、確実に真似できるようになる.

たまに、脇下方向にボールの軌跡を動かし、途中でループシュートに変えると、キーパーは脇下へのシュートに反応するので、腕が下がり顔の横を通るゆるいボールにも反応できない.

Ⅶ ジャンプシュートで軌跡を変化

z5

<狙い> 空中でシュートフォームをコントロール出来るようにする.

① シューターは位置取りからパスを受け、0-1ステップでジャンプし、ボールの軌跡を変化させてシュートする.

②パスはシューターの顔を目標にする.パスが悪いとクイックパスが出来なくなる.

③DFのブラインド側にシュートするのを基本とします.

 指導ポイント

*フォワードスイングの途中に、ボールの軌跡が変化しているのかを見極める力を養って下さい.

*シューターのフォームとシュートコースが違っているかを見極められるようにして下さい. 

*右上へのフォームから手首を使って左下へシュートする場合、ボールを持つ腕がスリークウォーター(ボールを握る人差し指が真上に来る)にあると、スナップを使うだけでボールのコースを変化させることができます.

右にDFの壁があり、DFの左から右にシュートする場合は、頭の後ろをボールが通るようにすると、スナップをつかってボールのコースを右に変化させることができる.

コツ:ジャンプ足の方向の逆に投げると、キーパーの動きの逆になり,得点できる.

Ⅷ オールコート 3対2 速攻のシュート場面でGKの逆へシュートできるようにする.

ドリブルを使わず、速攻でノーマークの位置からシュートする。パスやシュートのプレーが0‐1ステップで行うように指示する.

Ⅸ クールダウン

上記指導に関わる練習のバリエーション

*課題:ボールに合わせてステップ(0‐1)を踏む.

z6

*側方上部から見た図

ボールを弾くようにパスするのではなく、ショルダーパスをさせること。

*初めは相手のパス時機をうまく計れず、ジャンプ前にパスを受けたり、ジャンプ後の着地時にパスを受け、スカイパスは上手くゆきません。しかし、数分の練習又は数日後に、スカイパスが継続できるようになります。

*ストレッチやウォ-ミングアップの後の動き作り練習として行うと良い。初めは10連続スカイパス・2セットを課題とし、上手くゆかなくても15程度を目安にその日は終って下さい。

課題:ボールに併せてステップし対人パスからフェイント(位置取り・フェイント・パス)

<狙い>位置取りからシュート動作、フェイント、ジャンプスロー動作までを一連の動きで実施できるようにします。地面反力を使ってフェイントに入れているかをチェックして下さい。0-1ステップのあと止まらず、着地による両膝の屈曲の反動を利用して、斜め後方に跳びさがれるようにします。横に移動しようと床を横方向に蹴ると、実際には斜め前に身体が移動し、DFとぶつかり攻撃が中断することになります。

z7

パスを受ける前にDFのマークを外した位置に走込み、0-1歩ステップでパスを受ける。 両足着地の反動を使って斜め後方に蹴り出し2歩目(右足)を着地しながら地面を蹴り、右斜め 右前に左足を踏み出しジャンプする。
*フェイント時に右方向に蹴ると助走速度がついているので、身体が斜め前に移動してDFにぶつかる(止められる)ことになり、攻撃が止まる原因となる。
*パスレシーブ時に両足を着地する時に時間をかけると、反動(地面反力)を使えなくなるので、斜め後方への移動が少なくなり、DFとの間合いを多く取れなくなる。
*地面反力を使えない選手には、まずボールを持たずに反動練習をし、慣れたなら着地時にボールをパスし、ボールを持ってフェイント動作を行わせてマスターさせる。
<チェック> フェイント後身体が横に流れて(弧を描けない)スローしていないか?

前のページ この項目次